「脱エクセル」「エクセルを卒業してAI社会に備えよう」「まだエクセルを使ってるんですか?」等々、エクセル業務現場の心配を煽るようなフレーズが飛び交っていますね。
業務を飛躍的に効率化すると評判の RPA が導入されるとエクセルは不要になるのでしょうか?‥えっ?エクセルを使っている人間も!?
<目次>
RPAとは
RPAとAI
RPAの守備範囲
EXCEL不要論
業務の標準化
RPAの種類
RPAとEXCELマクロ
野良ロボットとは
RPAとは
RPAはRobotic Process Automation(ロボティック・プロセス・オートメーション)を略したIT略語で「ロボットのようにPC作業過程を自動化する装置」を意味します。
ロボットと聞けば、つい人間型ロボットを連想してしまい、システムをテキパキと動かしているありさまを想像する方もおられるかと思いますが、RPAは外側からシステムを操作するのではなく、「パソコン」の中に常駐し、人間に代わってパソコンを操作してくれるという「パソコン作業代行」専用の装置なのです。
「人間に代わって」と、「パソコン作業」という表現から想像がつくはずですが、RPAの業務は「人間の代行」つまり、人間がすでに行っている業務であることが条件です。人間ではできないこと、今まで想像もつかなかった手法ではないのです。もうひとつの「パソコン作業」とは、日々人間が扱ういつもの「パソコン」です。スーパーコンピューターでも人工知能でもない、末端メニューを操作するための「パソコン」です。
すこし落ち着けましたか?
RPAとAI
「話題のRPAさえ導入すればAI化に近づく!我が社も最新テクノロジー導入で人件費も大幅削減できるぞ!」などと、大げさなCMを鵜呑みにしてしまって欲しくてたまらなくなった経営者も大勢おられるようです。AIは人工知能だから万全!これで今までの古い非効率な旧システムは何もかも要らなくなる、と勘違いしておられます。
RPAはAIの一種なのか?という疑問に対して、まず明確にしておきたいことは「RPAは人工知能だから」と言うような過度の期待感に対する一定の線引きが必要です。RPAが「ロボットのようにPC作業過程を自動化」するのに対し、AIは「大量のデータから分析結果を導き出す」「より良い選択肢を取る」等のレベルの差があります。つまりRPAが「既存作業代行」とするなら、AIは「判断業務」とも言え、混用を避けたいところです。
RPAとAIの違いを理解した上で、あくまでも段階的に人間業務の一部をロボットへ預ける試みの第一歩とできれば大変意義深い改革に繋がることでしょう。
RPAの守備範囲
「そこは適当にケースバイケースで」とか「もっとちゃんとわかる資料を」など、今まで人間に対して行っていたような「丸投げ式依頼」はRPAには理解できません。
ここでRPAと人間との「役割り分担」が必要になります。RPAを休みなく動かし続けるための「パソコン業務の見直し」も必要となります。
「役割分担」「業務見直し」ができれば高額なシステム投資をせずとも、働き方改革や全体最適を最短で実現できるはずで、この事はRPAとの分担ではじめて気づいたことでもなく、過去のIT化の議論の中では毎回話題になっていたことでもあります。
RPAが守備範囲とする部分とは人間が与えた指示(シナリオ)を忠実に実行する作業です。シナリオとは、パソコン上で行う動作を順番に細かく登録したもので、RPAロボットは実行時刻が来ると、登録されたシナリオの動作をその通り実行するといったしくみです。
対象のパソコンを操作することによって処理できる作業であれば、あらゆる作業の手順をRPAへ事前に教育しておくことで、教わった手順をミスなく黙々と実行するのがRPAの機能です。
人間はくり返し作業が苦手、長時間続ければ「辛い」「能率が落ちる」「ミスが起きやすい」のですが、RPAは24時間365日休みなし、同じペースで、教えられた通りミスなくやり遂げることを特徴としています。
人間としては、くり返し作業から解放されるチャンスであり、単純作業から卒業した人間はIT導入以来はじめて真のホワイトカラー業務に就く事が可能となります。
RPAは人間の代わりにパソコン作業はしますが、人間の代わりに考えることはしません。教えられたとおり作業はできますが、教えられていない事は一切やりません。RPAは「今あるシステムを教えられたとおり動かす装置」なのです。このように人間に代わって「作業代行」はしますが、代行する作業はもちろんRPA自身が決めているはずはなく、結局は人間が依頼しているのです。
人間側が依頼するからには、作業を「依頼」できるように「事前整理」しておく必要がありますが、ここで業務の「定型化」の必要性が見えてくるはずで、この「定型化」こそが「装置」と「人間」の役割分担を決める大切な要素となります。
EXCEL業務の中で特につらい繰り返し作業や、バラバラに導入してしまった各種システムへの入力作業など、人が「苦しい」と感じる単純作業をロボット化することで、人が「創造的業務」「本来業務」に集中できることになるためには「定型化」が大前提となるのです。
毎月の締め処理などEXCELで行っていた「定型業務」など、処理手順が決まっている作業は、人間は苦しいと感じますが逆にロボットは大の得意です。しかも高速でミスなく、文句も言わず24時間働き続けてくれるのです。
EXCEL不要論
「我が社の帳票は部署ごとにバラバラだ」「フォーマットの標準化ができてない」と嘆く上層部の方をよく見かけます。おそらくどこかのシステム営業に吹き込まれたのでしょう。
「エクセルは各人好き放題作れるからな」「標準化できないところがエクセルの弱点だ」「エクセルは標準化には向いていないから廃止する」などという人も居ますが、社内の問題が見えていないようです。鏡に映った自分の顔が気に入らないから鏡を割るのと同じです。
現状のエクセル業務をすべてRPAに代行させた結果、ついに人間が居なくなる、などという事はまず考えられません。
もしも社内の全業務が100%完全にシステム化できていれば「個別エクセル業務」は存在しないはずなのですが、システムの届かない部分を人間が補ったり、システム間の連携を人間経由で繋いだり、アナログ情報をシステムへ入力したり、システムから出たデータをわかりやすい帳票に再加工したりと、個別エクセル業務は無数に存在し、企業が存続する限り新しい業務が増え続けています。
整理できた定型業務はRPAに任せ、人間はもっぱら増え続ける「未整理」部分を整理し、「定型化」してRPAへどんどん依頼できるようになれば会社全体の生産性は飛躍的に改善され続けます。
未整理業務を整理、定型化=「業務の標準化」実現の為にはエクセルは都合の良い道具と言えます。本来の「標準化」とは、個別業務からボトムアップ式に結実した産物であるのが正常な姿です。
業務の標準化
RPAに教え込むことができるまでに整理された「業務手順」すなわち「標準化された基礎」ができていればRPAへ次々と作業を任せることが可能となります。
業務現場=「地盤」とRPAの間を取り持ち、業務の整理=「業務手順」、「標準化された基礎」の構築役にはEXCELが向いています。業務現場の課題をEXCEL上で定型業務化できれば、その操作をRPAへ任せることでそのまま自動化ができるわけです。
「標準化された基礎」構築にEXCELは向いている最大の理由は、システム部署やEXCEL専任者に任せることなく、業務現場自身がシステム優先ではなく「業務優先」で造り上げることができるからです。
「標準化」とは、個別業務からボトムアップ式に結実した産物であるのが正常な姿です。
しかし時には「標準化」を外部に任せてしまう、という失敗も見受けられます。
これはシステム導入のための業務標準化であり、「自動化 → 標準化」というトップダウンの関係となります。ロボットが立つ為に、とりあえず敷いた不安定な板のようなものと言えるでしょう。
「あと付けの標準化」とは、購入した装置を動かすためにシステム納入側がシステム側に都合の良いルールづくりをするものであり、「システムに業務を合わせる」などとスマートな表現をすることがあります。しかしこれはシステムの顔を立てるために「業務を犠牲」にすることにもなってしまいます。「標準化」の遅れが「後付け標準化」を招いてしまう、という同じ失敗を過去から繰り返して来ました。
RPAの種類
RPAには、サーバー型、クラウド型、インストール型の3種類が存在し、それぞれ特徴を持っています。
サーバー型は社内(プライベートクラウド等)へ専用サーバーを置いて全社プロジェクトの下、大規模な自動化を行うためのもので、導入費用やシナリオ開発費用、メンテナンス費用が高額となります。シナリオ開発には専門知識が必要で外注することになる等、個別業務の改善には向いていません。
クラウド型は社内複数の端末からアクセスができるため一見便利そうに思えますが、複数ユーザーが利用する上でのルール、統制が取れていなければ、利用者間トラブルや属人化などのリスクを抱えている一方で、導入が容易なためにユーザー教育が行き届かず「使わずじまい」に終わることも在り得ます。
インストール型は、専用PCに直接インストールして使用する為、セキュリティ面での安全性が高く、導入費用・メンテナンス費用も安価であるところが大きなメリットです。しかし低価格であることから、業務部署の要望で対症療法的な「配布型導入」に結び付くこともありますので注意が必要です。
RPAとEXCELマクロ
エクセルにも「自動実行」機能が標準装備されていますがRPAと役割分担することで、自動化も効率的に運用することができます。
「マクロ」と呼ばれるエクセルの自動化機能にはプログラミングの知識が必要無い「マクロの自動記録」の段階と、プログラム記述スキルが必要な「Visual Basic」の2段階が存在します。
自動記録式マクロは「記録」ボタンを押してから「記録終了」ボタンを押すまでの間に行った操作を記録し、記録したマクロはいつでも「実行」できる機能であり、特別な知識は一切必要ありません。
RPAとの違いは、自動記録式マクロがエクセル操作に限定されるのに比べ、RPAの自動化範囲はエクセル以外の例えばWEBブラウザ等も含むPC上の全操作である点です。
もちろんほとんどのRPAでエクセルのファイルを開いたりコピペなども操作はできますが、マクロの自動記録を使ってエクセル側で自動化が可能なら、RPAとマクロの役割分担は自動化を効率良く進めるきっかけになるはずです。
野良ロボットとは
「野良」や「ブラックボックス」の問題は発生してからでは手遅れ、それらを造り出す環境を変えない限り根本的な解決は望めません。
何故「ブラックボックス」と呼ぶのか?理由は見えないから、です。なら見えるようにすればブラックボックスではなくなるはずです。
ブラックボックス化のプロセスを見える化するのではなく、もっと前の段階「業務」そのものを見える化しないといけません、しかも業務は刻一刻と常に変化しているので、業務棚卸しのような「1コマを切り取った状態」ではなく、常に見えていなければなりません。
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