いつも使っているエクセルシート上に「送信」「集計」ボタンを取り付けたら、こんな便利になった!という事例です。
スーパーの買い物カゴやショッピングカート、搬入口で見かけるカゴ車や台車などの後方資材には色々種類があり、管理も難しいものです。
チェーンストアの後方資材は店舗内共用であり、責任部署が明確になっているケースは少ないようです。まあチェーンストアだけの問題ではなく、共用資材という存在の運命かもしれませんが。
今回の事例は「業務改善力を身に付けるエクセル教室」へ、チェーンストア本社の物流担当者から来た相談で「すぐに溢れ返るカートや買い物カゴなど後方資材の店舗間在庫調整を合理化したい」というものです。この会社では物流部門が伝統的に後方資材を管理しているようです。現状は店舗任せ、トラック便任せになっている資材の調整を「送信」「集計」機能のついたエクセルで解決しようと考えたのです。
後方資材調整 改善前
溢れ資材返却方式
たとえば各店舗搬入口付近には「空カゴ車置き場」という場所があって、商品運搬に使ったカゴ車を折りたたんで連ねて行きます。流通センターから来たトラックは納品が終わると、誰が指示するわけでもなく空カゴ車を積んで帰ります。
在庫調整をルールに基づいて意識的に、というよりも習慣的に行っているだけで、基準在庫等も設定されておらず、ただ溢れたから持って帰ってもらう、というやりかたです。この方法のまま店舗数が増加すると、納品が集中する販売ピーク期に商品陳列が追い付かずカゴ車が空にならない店舗が多発すると、突然納品用カゴ車が一斉に不足する事態に陥る事になります。
定期棚卸し方式
後方資材も商品棚卸しと同じ半期に1度のサイクルで棚卸しを実施して、過不足を調整することになりました。後方資材台帳には店規模別に基準在庫が示されており、過剰分を不足店舗へ移動するという方法です。
そのための棚卸し台帳は本部スタッフが作成し、手書き記入された台帳が本部へ送付され、スタッフがエクセルを使って一覧表形式に入力し、過不足をチェックしながら品目別にどの店舗がどの店舗へ何台移動するのかを決定して全店へ指示することになります。
少数の本部スタッフに作業が集中してしまい、調整に時間がかかりすぎるわりに、半期毎の調整では頻度が少なく効果が小さいためにこの方法は現実的ではないと判断されました。
後方資材調整 改善後
スタッフが作成した「送信」「集計」機能付きエクセルシート
100店舗超えをきっかけに、エクセル申請を使って、毎月1回 「後方資材棚卸し」 を実施することになりました。写真付き資材台帳に、基準在庫欄と現在在庫欄があり、毎月末に現在在庫欄へ店内すべての在庫を入力して「送信」します。「送信」ボタンの横に「集計」ボタンが付いているので押してみると、他店の報告内容を見る事ができます。この「現状の見える化」によって改善の方向へ進んだと言えます。
チェーンストアの中の1店舗というものは、情報から隔離され、結局は単に1店舗であって、全社を構成している1店舗である自覚を維持する事はなかなか困難なものであります。ところが、この事例のように「集計」ボタンを押すだけで、自店の位置を知る事ができると構成員である事の自覚や、競争意識も目を醒まします。
後方機材の場合、棚卸しが完了して、各店舗に対して細かい指示を出すまでもなく、次回棚卸しまでに、店内の不要機材を所定場所へ集めることが店舗の自覚として当然に行えるようになり、原因不明の不足のための期中の追加購入はなくなりました。
標準化を押し付けるまでもなく 見える化 で大きな効果が上がる、という事例です。